愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題



その19.≪お師匠さん、有難うございま〜す♪≫



日(2001/10/01)、入院してらっしゃる恩師、藤間富公衛師の病室
を訪ねました。といっても、お見舞いに伺った訳ではありません。数
日前にお師匠さんから、「1日はお稽古日だから、お稽古してあげる
から病院にいらっしゃい」とのお電話を頂いてたからです。勿論、病
院の公衆電話からです。「そんな、無理なさらなくても、数週間で退
院との事ですから、退院なさってからで結構です」とお断りしたんで
すが、「他の人のお稽古は、金弥(後継者のお嬢さんです)で間に合
うけど、喜州さんに頼まれてる『さるかに合戦』の振り付けが、どう
しても気になって仕様がないから、来て!」との事でした。   

師匠さんは現在、血圧が高いのを下げる為に、食事療法を兼ねた治
療入院をしていらっしゃるんです。血圧以外は、何処も大体健康でい
らっしゃると聞いて、「忙し過ぎるお師匠さんには丁度いい骨休めだ
から、この際ユックリと体調を整えて頂こう」と、僕は喜んでいたの
ですが、生来ジッとしているのが一番苦手なお師匠さんには、食べて
寝てるだけの数週間もの入院生活は、返ってストレスになるのかもし
れないと思い、お言葉に甘える事にしました。         

目に掛かってみると、顔色もよく、血圧も殆んど正常値に戻られた
そうで、「退屈だから、今検査している部分の結果が判り次第、あと
2〜3日で退院するわ」なんて仰るんです。「血圧が下がったのはお
薬が効いたからで、退院して自宅療養すると仰っても、とてもジッと
して寝ていられるお師匠さんじゃありませんし、ゴソゴソ動き回って
また血圧が上がったら大変ですから、主治医の先生の言う事をチャン
と守って下さい」とお引止めしましたけど、あの分では多分、予定よ
り早く退院なさるでしょう!(笑)でもお元気そうなので、ひとまず
安心しました♪                       

師匠さんは早速ノートを取り出されて、『さるかに合戦』の一くさ
りを、キリのいいところまで口立てで教えて下さいました。僕も椅子
に腰掛けたままで、必死にノートしてお稽古が終りました。そこに看
護婦さんが入って来られたので、長居してはいけないと思って帰ろう
としたところ、「どうぞ、ユックリとお話していって下さい」と言っ
て下さったので、暫く世間話などしている内に、話題が来年の「創作
舞踊フェスティバル」の事になりました。現在の進行状態や、新しい
参加者の方達の事を一通りご報告した後、お師匠さんがおもむろに、
こう話し出されました。                   

「ネェ喜州さん、私、どうしても腑に落ちない事があるんだけど」
「なんでしょうか?」                   
「貴方が今回『藤間喜州』ではなく、『奥田泰啓』の名前を使って
  るのは、色々と新しい試みをする事で、万一お家元様にご迷惑が
  掛かってはならないからという配慮からなんでしょう?」  
「はい、そうです」                    
「でも実際は、お家元様にご迷惑が掛かるような、そんな変な事を
  してる訳じゃないんでしょう?」             
「はい、やるからには、キチンとした会にしたいと思ってます」
「でしょう?だったら堂々と、『藤間喜州の会』としてやった方が
  いいと思うんだけど」                  
「ハァ・・・でも、色んな流儀の方達に、少しでも抵抗なく参加し
  て頂く為には、今回は『奥田泰啓』の名前の方がいいと思うんで
  す。勿論コレは、『企画・制作・作舞』としての名前で、出演者
  としては、『藤間喜州』の名前で踊りますから!」     
「そう!それならいいけど・・・『作舞』も『藤間喜州』でいいん
  じゃないかしら?」                   
「実は僕も、そうしようかとも思ってるんですが・・・今でも『他
  流の人が藤間さんにお稽古して貰って踊るんだって!』などと陰
  口を言う人もいる位ですから、『作舞・藤間喜州』だと抵抗があ
  るんじゃないでしょうか?」               
「そうなの?!全く色々と大変ネ〜・・・私は、折角喜州さんが新
  しい事を頑張ってるんだから、もっと『藤間喜州』の名前を表に
  出せないものかと思ったのよ」              

「有難うございます。実際に会を観て頂ければ、どういう主旨の会
  か、皆さんにも解って頂けると思いますから」       
「そうネェ!私も今回は、『作舞』で参加させて貰う訳だから、頑
  張っていい会にしてね」                 
「はい、頑張ります!嬉しい事に東京でも、この長崎の会の延長線
  上の催しとして、ネットでお友達になった舞踊家だけの会をしよ
  うという動きがあるんですよ!」
             
「そう、いい事ね!よかったわね♪」            

が思い切って、今回のような新しい試みに挑戦出来るのも、こんな
理解のあるお師匠さんあっての事です。お師匠さんご自身も、お若い
時から色々なジャンルの方達と、冒険的な試みをやってこられたから
こそ、僕の事も温かく見守って下さるのだと思います。僕はこんな素
晴らしいお師匠さんにつく事が出来て、本当に幸運だと思います。お
師匠さん、有難うございます♪(これ、決してゴマ擂りじゃありませ
んヨ!)                          


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